入居企業インタビューTenant Interview

プロソニック株式会社

プロソニック株式会社

写真

社会の様々なところで利用されている「超音波」技術。これを利用した加工機や溶着機の設計・製造を主に手掛けておられるのがプロソニック様です。しかし、その事業領域は大変ニッチな分野に注力され、知る人ぞ知る世界でも屈指の技術力を持った企業です。創業者である青木様と、部長の齊藤様にお話を伺いました。

  • 青木 茂実 様

    代表取締役社長

    青木 茂実 様

    業界をリードする技術者、そして経営者として鋭敏な雰囲気を持たれる一方で、休日はご家族との時間を大切にされるという穏やかな一面も。KSP内にその碑も立つ放電加工機で有名な井上潔氏を尊敬されており、KSPを知ったきっかけもKSPについて語る井上氏の雑誌記事を見たことだとか。すぐにKSPに電話を掛けられたそうです。標語などは嫌いで社内にはないとのことですが、座右の銘をあえて言うなら「人にやさしく、自分にはもっと優しく」だそうです。

  • 齊藤 剛 様

    営業技術部 部長

    齊藤 剛 様

    大事にしている言葉は、ご本人は“ありきたり”と言われますが、疑う余地のない名言「継続は力なり」。繊細な作業で独自のスキルを積み重ねてこられています。休みの日は青木様と同じく、家族のために時間を使うようにしているとのこと。また、趣味である音楽では昔からバンド活動をしているそうで、ギターを担当し、以前はライヴでツアーにも出ていたそうです。音楽を続けていくのはもちろん、超音波にもこのまま関わっていきたいと力強く語られました。

専門的かつ高度なニッチ市場ながら、トップの技術を自負

Q:どのような製品を扱われているのかご紹介ください。

A:主に、超音波の中でも特殊な『強力超音波』を利用した加工機と溶着機です。

青木:お腹の赤ちゃんの様子を診たり、建造物の内部構造を把握したり、建物の入り口でネズミの侵入を防いだりするなど、超音波を利用した機器には多様なものがあります。それらとは少し異なり、私たちの利用している技術は超音波の「振動振幅」の「振幅」技術で、『強力超音波』という部類に入るものです。具体的に取り扱っている製品としては「超音波加工機」と「超音波溶着機」と呼ばれるものになります。

青木:超音波加工機は、ダイヤモンドドリルを使用してガラスなどの脆性材に穴をあける機械です。高い精度の深穴加工を施すことができます。超音波溶着機は、接着剤やボンドを使わずに、超音波の振動だけで2つのパーツの接合面に強い熱を発生させ、溶かして接合させます。

齊藤:超音波溶着は、自動車部品や食品の包装などに使われています。衛生用マスクのゴムを不織布の部分と貼り合わせているのも超音波溶着です。あれは、接着剤などではないんですね。そして、一般的な熱溶着ですと熱源をずっと高温に保つ必要がありますが、超音波による溶着ですと瞬間的にしか電力を使わずに済みます。工作ツールは冷たいままですので、安全でありエコにもつながります。

Q:それらは、どのような点で評価されていますか。

A:他社では断念したような難しいニーズを実現している点です。

青木:弊社では強力超音波を使い、他社では実現不可能なニーズにもお応えしています。それらは得てして大量発注をいただけないものですが、ご要望にお応えすることで、そこから派生的に2台目、3台目の注文へとつながることが期待できます。

齊藤:強力超音波の中でも、弊社では特長のあるものを扱っています。例えば、超音波ホーンと呼んでいる振動体があるのですが、これを回転させるという技術はその一つです。ほかにも、競合ではほとんどまだ実用化されていないような技術もあります。

青木:どのようなところで利用されているかは、契約上の守秘義務があり詳しいことはお話できませんが、大手の製造業でご利用いただいています。宇宙開発分野におけるロケット部品の加工や、防衛技術などに利用されるもので、ニッチなマーケットですが弊社が圧倒的なシェアを持っています。私たちの技術には独自のものがありますが、そうたくさん売れるということはありません。たくさん売れることも望みません。ただ、技術的にはとても面白いものです。

写真

写真

情熱で起業し、信用に応え、技術を証明した28年

Q:どのような状況や思いで、事業を立ち上げられたのでしょう。

A:魅力を感じていた超音波から、異動によって離れたくなかったので。

青木:起業して最初の大きな商談のことは、やはりよく覚えています。我々が作る機械は高額ものなので、お客様からご注文をいただいて初めて製作することができます。つまり、発注をいただく前に、機械の現物はありません。ですから機械を発注することに、お客様側の購買部が難色を示しました。テスト加工をせず、現物等も何も見ずに信用して大丈夫なのかと。しかし、お客様側の技術担当者が我々の技術を信用してくださり、私もそれにお応えする自信があったからこそお引き受けし、当時3,500万円ほどした機械を無事に納品させていただきました。

青木:ちょうど齊藤が入ったころにも、ある特殊な光ファイバー部品の加工が大変な時期でした。超音波で穴をあける作業が必要な、1つ100万円くらいする部品になります。未だに世界記録をもつような精密な部品で、穴をあける技術が弊社にしかありませんでしたので依頼が来ていました。ひとつの加工に1ヶ月くらいかかり、私一人ではできないため、彼を採用したわけです。

齊藤:はい、それが17年くらい前で、最初はアルバイトでした。もともとガラス加工に興味を持っており、加工機を扱うとのことでしたので、工芸品をイメージして。ところが、想像していたものとは全く違うもので戸惑いました(笑)。また、音楽をやっていたのですが、超音波というものは全く知りませんでした。人の耳に聞こえない音を加工や溶着に利用する技術があると知り、とてもニッチなものではありますが面白いなと。普通では出会えない技術なので、それを身に付けることができ、大手企業の方々ともお仕事ができる点に魅力を感じています。

青木:「御社の技術がナンバーワンですよ」と、上場企業の方に言っていただけると大きな自信にもなります。ただ、もしも機械が最終的に検収とならなければお金になりませんので、楽しい半面、気苦労も少なくありません(笑)。会社を経営すると、利益を出さなければならないという宿命に追いかけられるものです。いろいろ経営者を見ていると、技術に邁進している人と、収益に邁進している人とに分かれます。後者だと、技術をおざなりにする傾向が見られます。私は技術に邁進するあまり、お金儲けはあまりできませんでしたが、面白い経験はたくさんできました。

写真

写真

事業の成長や、営業上の利便性でメリット

Q:KSPに入居していて、何かプラスなことはありますか。

A:「KSPに認められた企業である」ということが信用に。サポートもうれしいです。

青木:先ほど、契約上の守秘義務があって詳しいことをお話できないと言いましたが、KSP に入居しているということは、弊社としての最大の宣伝になっています。

齊藤:そうですね、技術的な特長だけでなくKSPにいるということが、大手の多くのお客様から信用いただけるいい気な理由の一つになっていると感じます。

青木:私が入居した頃はベンチャーブームもあって競争率が高く、3次審査までクリアしないと入居できない高いハードルがあったんですね。当時、20社ほどしか入居できていませんでした。そこに選ばれている企業だということで信頼感が生まれます。審査の決め手は、やはり「超音波」でしょう。耳慣れないカテゴリーの事業だったことが評価されたのではないかと思います。大手の顧客が多いことも評価のポイントだったようです。

青木:その後、KSPからは色々なサポートを受けてきました。 例えば、取引銀行についてのアドバイスや、補助金を受ける際の推薦状などをいただき、今日に至っています。

Q:KSPという施設、そして溝の口という立地には、どのような魅力がありますか。

A:施設も街も、来るのも滞在するのも、とても便利で喜ばれます。

齊藤:KSPは居心地がいいですね。館内が充実しています。コンビニがあったり、郵便局があったり、ホテルがあったり。昼食にはお客様も飲食店をご利用になられますし、遠方からのお客様が出張でホテルを利用されることもよくあります。日本全国に弊社のお客様がいらっしゃるのですが、私が出張に行くとKSPのことをご存知の方がよくいらっしゃいまして、それだけで話題が弾むようなこともありますね。

青木:溝の口は交通の便が大変良いですよね。 東急線と南武線が走っていますし、東名高速道路の入り口も近いですから。 第三京浜も近いです。駅前は昔ながらのお店がたくさん残っていて、よく利用しています。夜、お客様をご案内するのにも便利です。駅から少し離れると、良い環境もたくさんあります。

青木:そうですね、新横浜駅からもバス一本で来られますし、海外からのお客様も多いので大変喜ばれています。KSPへ通勤する私も、駅からバスが出ていて便利です。車で来られるお客様も多いのですが、広い駐車場もあります。

「ソニックのプロ」として、超音波の可能性をさらに拓く

Q:今後、どのような事業展開をお考えですか。具体的に考えておられることは。

A:さまざまな製品や分野の課題を、超音波で解決できればと考えています。

青木:今後は、この2つの製品技術を核に、さらに違った超音波の製品を開発したいと考えています。例えば、より周波数の高い分野です。具体的には、スケーラーという虫歯を削る歯科衛生器具があるのですが、これを超音波で作りたい。大きいカメラでやっと見えるような小さな虫歯を除去するために、既存のドリルでは虫歯の10倍くらい広い面を削らなければなりません。薬品を使う方法もあるのですが、副作用なども考えれば使いたくありません。今のところ弊社のスピンドルでは大きすぎますが、電動歯ブラシくらいのサイズで回転と振動を与えられるものを開発したいと考えています。

青木:そして、工業品はますます小型化しているので、我々もより微細なものを加工できる技術を確立したいと考えています。近未来では、生分解性プラスチックも超音波で溶接できるようになるでしょう。今も溶接できるのですが、まだまだ再び分離しやすい。それを克服する手段を見つけ、製品化したいと考えています。

齊藤:私もそこで、製品化はもちろん、拡販でも貢献したいと思っています。社長と一緒に新しい分野を開拓していけたらと思っています。


会社名 プロソニック株式会社
所在地 神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1  かながわサイエンスパーク(KSP) 東棟204
代表者 代表取締役社長 青木 茂実
Webサイト https://prosonic.co.jp/